改善の意識がなくなると、慣れた技術で慣れた作業をするようになります。技術の改善とは、短期的には、作業効率とトレードオフの負の側面もありますが、いわば、その作業がいったい何を目的としているのか、思考停止を防ぐための必須な行程と言えましょう。
例を挙げますと、本州を遥かに超える高性能な家づくりが当たり前となっている北海道では、現在、室内の防湿の精度を高めた結果、外部への排出が不要となり、通気層を閉塞させるという従来と真逆の流れになってきている事実があります。気候帯の異なる東京以西で、同じ構造が適しているのではないのですが、この最先端の知見を自分たちの現場にどのように活かしていくべきなのか、私は自問自答します。最新の知見を探求するという事は、このような自問自答のサイクルの積み重ねです。
私たち建築の造り手は、営業文句として、自動車のように一律に品質管理された工業製品的であろうと見せています。しかし、建築という作業をある側面から定義するならば、この大自然の中で、様々な条件の異なる場所で人工的に空間を区切り固定をするという作業といえます。
要は、品質が一律であるはずがなく、全て千差万別、つまりオーダーメイドのものと言えるではないでしょうか。決まった仕様を慣れた意識で作るのではなく、経験と最新の知見とを、常に照らし合わせて確認をする意識こそが重要なのです。
私は、改善をし続けます。得られた技術に安住する事はありません。