CAPE COD style house
Good design
Good design
Image Credit: Mioi Tamura / MaysCarpentry
投稿日:2023年5月7日 更新日:2023年5月14日
2021年4月の独立以降、おかげさまで徐々に新築、リフォームとSNS経由(99%がtwitterです)でのお問い合わせが増えてくるようになりました。三か月目にお問い合わせ頂いたお客様とは現在も繋がっています。本当にありがたいことです。
この度、長く温めていた建築プランを公表する事にしました。何故なら、いつも同じような回答をしていたからです。定番の質問はこうです。
『村山さんに頼むと、どんな家ができますか?』
温熱やデザイン、防水の納まり、北米輸入住宅の様式など、この後のクライアントと私のやりとりはいつも多岐に渡ります。主にメール、twitterで。信頼を寄せてくれる文章を読むこと、それに回答することは、朝や晩、現場作業の休憩時間など、憩いのひとときです。
正直に打ち明けますが、何人かは何の前触れもなく、音信不通になりましたが。。
話を戻しましょう。。
単に問い合わせを待つのではなく、ここで発信する事で、より多くの方の耳目に届くのではないか、と。
ご提案する家は、私自身が大好きな、北米のケープコッドスタイルの住まいです。ケープコッドは、急勾配で大きなゲイブル(切妻屋根)とドーマー、煙突を特徴とします。
20世紀中頃のリバイバルスタイルを経て、様式としての外装は、ラップサイディングやモルタル等、特に限定はなく、素朴な風合いやエレガントな佇まいまで幅広く対応できる、シンプルな定番のデザインです。
Image Credit: brett jordan / Unsplash
延床面積が26坪の二階建モデルプランで、キッチンや浴室、トイレ、土地の配管工事等の一定の建築諸経費を全て含めた総額で、税込1900万円から(解体や地盤改良は除きます)。延床面積が20坪の二階建モデルプランの場合は、税込1700万円から。安いだけのローコスト住宅は提供したくないので、今現在求められている高性能、高品質な諸々の要素を余すところなく詰め込んでいます。
Image Credit: daniel-mccullough / Unsplash
枠組壁工法の構造です。つまり、構造の設計は枠組壁工法の告示に基づいて行っています。告示の規定に準拠する事で、耐震性に充分に安全が担保されるため、法的な要請や、特殊な間取りのご希望がなければ、通常の場合は構造計算は行いません。近年web上で構造計算の必要性が強く説かれていますが、これは主に軸組工法や告示に準拠していない枠組壁工法を前提としています。
ケープコッドスタイルの家は、開口や吹抜の少ない非常にシンプルな構造ですが、参考までに、神奈川県横浜市で建てる延床面積:86m2(26坪)の二階建モデルプランの場合、耐震等級3(住宅性能評価の重い屋根を基準)が要求する二倍以上、耐風等級2(前に同じ)が要求する三倍以上の耐力壁を備えています。ちなみに枠組壁工法は剛床が標準のため、軸組工法と異なり床倍率の検討はありません。
枠組壁工法を私が強く推薦する理由は、まず、その建築体系が日本のみならず、カナダ、アメリカ等と共通するため、それらの国々の建材や技術の導入が容易であるという事です。技術革新は母体となる需要によるところが大きいのです。
そして、誰もが無料で使えるオープン工法であり、一般の方でも構造を理解し、施工が出来るからです。例えば、耐力壁の種類も、面材や釘の種類が変わるだけです。床勝ちなので、外壁も内壁も同じ構造です。誰でも理解出来る単純さがあります。また、いざとなれば、殆どの材料は近隣のホームセンターで調達ができるのです。
Image Credit: Mays Carpentry
防水処理は、まさに施工する人間だからこそ自信を持って言えます。いつも細心の注意を払って施工しています。工事中に雨が降れば、どの工程であっても、作業のタイミングを見て必ず雨漏りの確認をしています。本州で建築する以上、建築中の雨は避けられません。
多分に漏れず、私自身も、過去、透湿防水シートのみの段階での台風到来を幾度となく経験していますが、適切な施工をすれば、この時点で漏れる事は殆どありません。この適切な施工の水準が(恐らく冗長性と呼ぶべきものですが)、おそらく私と世間一般とで意見を異にするところです(しかしながら賛同をしてくれる職方の方も多いはずです!)。誤解を恐れずに言うならば、透湿防水シートのメーカーの施工指針を守るだけでは不充分です。
工期の事もありますので、けっして時間をかける事が良いわけではありませんが、しかしながら、外皮の防水処理に関しては過剰過ぎるくらいの冗長性がある方が良いと断言します。漏らさないための入念な施工や気遣い、配慮の重要性を声を大にして主張したいです。
外皮は大工職、配管等の電気設備、給排水設備、外装等、職種が交錯する箇所であり、そもそも作業の責任の所在が曖昧になりやすいところです。私は瑕疵保険の是正工事や雨漏りの現場に意図して数多く立ち会ってきましたが、古い時代は、無理な納まりや防水処理もありますが、近年の建築の場合は、殆どの場合で、現場で誰かが最終的な目視管理をしていれば防げたのではないか、という見方をしています。
近年の雨漏りの事故では、瑕疵保険制度の義務化もあり、職方よりも、現場管理の不行き届きや、納まりの問題等、つまり工務店の責として手早く是正工事をする事が多いとは思いますが、それならば、なおのこと、流れ作業で工事を行うよりも、時間をかけて品質を担保するべきです。
責任者としては、現場で一番長く作業している、元請の大工職が適任です。間違いのない工事をお約束します。
Image Credit: sven brandsma / Unsplash
UA値は0.36(延床面積が26坪の二階建モデルプランの場合)、窓は基本的にクレトイシ社のモンタージュ樹脂窓(トリプルガラス仕様)を使います。断熱材は主にグラスウールを用い、別途、可変型の防湿気密シートを施工します。C値は0.5以下を保証致します。
前提となる結露制御の考え方をご説明致します。私がどのような考察や理論に基づいて施工をしているのか、という事のご説明です。
まず、害となる壁体内結露の原因は、90%以上が雨漏りです。外部から水分の供給があるのです。次に、湿気が壁を通過する主な方法ですが、これはふたつあります。透湿と空気の漏れ。この内、透湿よりも空気の漏れによる湿気移動が圧倒的に多く、実際のところ、住まいの水蒸気の動きの割合は、空気の漏れが98%以上、透湿は2%以下です。これらの比率のイメージは非常に重要です。
『家は呼吸する必要がある』という年配の方のアドバイスをよく聞かれる事でしょう。当たらずとも遠からず。確かに空気の漏れは強力な乾燥の駆動力です。濡れた木材に風をあてると確かに乾燥が早くなります。
しかしながら、空気の漏れは、同時に結露発生の強力なメカニズムでもあります。冷暖房を前提とした現代の生活スタイルでは、二律背反であり、そして空調効率の面からは、この諸刃の剣は手放す必要があります。呼吸する家は過去のものです。家は塞ぐ必要があります。
つまり、結露の制御のためには、全ての気候帯でまず気密対策が必要であり、そして入念な雨漏り対策が必要があるという事です。
同時に、寒い地域であればあるほど、透湿対策に気を払う必要があります。単体としての透湿抵抗、防湿層のみへの過度の信頼は正しくありません。6地域において、防湿層を施工しない連続気泡の現場発泡ウレタンフォームは一般的になっていますが、施工指針では必要とされているのにも関わらず、それほど問題とならないのは皆さんご存知だと思います。
私自身の施工としては、繊維系断熱材を扱う事が多いため、室内側のシート気密と室外側の面材の双方で気密処理を行います。面材は構造用合板でも構いません(構造用合板は可変型気密シートと似た透湿性向を示します)。いわゆるベルトとサスペンダーの手法、冗長性をとるアプローチです。
次に乾燥の制御の考え方ですが、気密性能を高めた構造は、今度は透湿のみが乾燥のための有効な経路、駆動力となります。室外側だけではなく、室内側にも放湿出来ればより安全です。強い防湿シートは室内側への乾燥を阻害します。可変型の防湿気密シートを用い、室内側にも放湿する余地を残します。内装は透湿性のある塗装で仕上げます。
ここで防湿層の解説をせねばなりませんが、その前に熱力学第二法則について。温度は高い側から低い側へ、空気の湿り気も高い側から低い側へ流れます。逆方向への流れは起きません。これは物理学の法則です。
つまり、防湿層は本来、気温の高い側に設置します。寒冷地では暖房期のみを念頭に、室内側に設置するのがセオリーです。しかしながら、温暖地では冷房期も考慮する必要があります。夏は室外側に設置するのが望ましいのですが、建築後に位置を変える事は出来ませんし、双方の両側への設置は、逆に水分を閉じ込める事になり望ましくありません。
この防湿層の位置の問題は、いわゆる夏型結露の問題です。R2000という、かつて関東地域での高気密高断熱住宅の黎明期の1990年頃に、既に、室内側に強い防湿層(ポリエチレンフィルム)を設けた場合の温暖地特有の問題として挙げられていました。この時の主な知見を以下にいくつか掲げます。
まず、外壁側に通気層があると結露の発生量を約半分に抑えられるということ。そして、水分の供給源は外気よりも構造木材そのものにあり夏場には吸放湿を繰り返しているということ。これは非常に重要な点で、木構造が本来的に持つ多孔質の水分吸放湿能力が、壁体内の一定の結露を許容範囲と出来るということを示唆しています。そして最後に、躯体の外側に断熱層を設置する、いわゆる外断熱の構造が有効に働くということです。
1990年から既に30年以上が経過しました。防湿層を施工しない連続気泡の現場発泡ウレタンフォームと同じように、これまで数多くの室内側に強い防湿層(ポリエチレンフィルム)を設けた家が作られてきました。
結論からいうと、様々な実地調査から、防湿層の位置に誤りがあっても、寒冷地に由来する、この構造は、本州の温帯地域でも確かに有効に動作してきた事がわかっています。私自身も、解体や改修の経験から、健全な躯体内部を確認しています。
では夏型結露の問題は杞憂だったのでしょうか。いいえ、私は杞憂ではないと考えています。夏型結露の問題は、言い換えれば、構造躯体の放湿性能、乾燥性能と考えて下さい。竣工後に意図しない水漏れの可能性は山ほどあります。急な雨で窓を開けたままにしてしまった、趣味の水槽を倒してしまった、排水口が詰まりシンクから水が溢れた。サッシの枠に物を落として穴が開いた。
このような万が一の水分侵入に際し、室内側に強い防湿層を持つ構造は、乾燥機能が脆弱だと私は考えています。棚上げ状態だった防湿層の理論と施工の齟齬が、ここで顕在化する可能性が高いと思うのです。
従いまして、現在では、どちらかといえば弱い防湿層、可変型の防湿層を用いた設計が望ましいと考えています。建材の進化を踏まえて、より安全精度の高い構造を作りたいからです。
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枠組壁工法でつくられた住まいは、省令準耐火構造、つまり、木構造でありながら、高い耐火性能を持っています。火災保険の構造級別でも鉄筋コンクリート構造と同じ、『T構造』に分類されています。
万が一耐火被覆(石膏ボード)の燃え抜けが発生し、木構造の躯体内に炎が入った場合でも、細かく組まれた枠組が防火区画のように働き、空気の流れを停滞させ(酸素の供給を遮り)結果的に消火を促す構造になっています。
構造に石膏ボードを直貼りしないところ、例えば、防音のため天井を下げたり、配管等を囲うように壁がふかされるところは空気の流れやすい連続した隙間を作りやすいので、この仕組みを損なわない設計施工がポイントとなります。具体的には、構造と同寸材の転び止めの施工、石膏ボードの先張りやロックウールの充填等。詳細は住宅金融支援機構の枠組壁工法住宅工事仕様書に書かれています。
高性能住宅の設計において、界床を空調のダクトのように用いるプランがありますが、個人的には、消極的な視点で見ています。省エネ性能と耐火性能は両立させるべきで、トレードオフにするのは疑問です。
余談ですが、この省令準耐火構造という、例外のような規定の由来を調べた事があります。どうして、枠組壁工法を、準耐火構造ではなく省令準耐火構造として別枠にする必要があったのか疑問に思ったのです。
日本に枠組壁工法を導入する際の話ですが、準防火地域での建設を行うため、1974年(昭和49年)に建設大臣が法令に基づき、 簡易耐火構造(現在の準耐火構造)同等以上と認めたことに端緒があります。
これは、カナダでの耐火建築物としての充分な実績と性能評価を考慮し、かつ建設省で行った部分実験の結果に基づいて審査されたものでした。
特筆するべきところは、1976年(昭和51年)に行われた枠組壁工法の実物大の火災実験では、着火から60分経過しても自立していたということです。建築基準法がそれまで規定していた木造の耐火性能とは、戦前に行われた実験に由来するのですが、いずれも着火から30分以内で倒壊していたのです。
細い木材はそれ自体が燃料です。一度着火すると尽きるまで燃えるというのが、それまでの常識でした。しかし、先に書いたような酸素供給を遮る防火区画の仕組みを取り入れると、燃えながらも、構造に一定の消火性能を付加することができるのです。同じ木構造でありながらも工法の差で耐火性能が変わるという事実をどう法制に組み入れていくべきか。
次の一文が当時の官僚や学者の考えの一端を表していると思われます。書籍より抜粋します。
『欧米とわが国では防、耐火全体の考え方が根底において相当異なっており、その利害損失を一言で言い切ることはできない。』
当時の日本の木構造に関する法令は、軸組の木構造を前提としており、その間隙に枠組壁工法を入れる事は困難だったのです。結果的に、枠組壁工法は、縦割りに別の木構造体系として規定されました。そしてその耐火性能は、省令準耐火構造として、既存の準耐火構造とは異なる名称が付与される事となりました。
今日では、軸組工法でも石膏ボードを梁や桁まで張り伸ばす事や、二階の床側に厚い耐火板を敷く事で、防火区画を作る手法や延焼を防ぐ手法が考案され、これは各々軸組工法の省令準耐火構造として認められています。
参考文献:木造住宅研究会編『枠組壁工法によるカナダ大使館館員住宅の実例研究』(1974)、戸谷英世『日本、米国、カナダの建築法規の比較研究 -枠組壁工法の技術規定をめぐって』(1989)
Image Credit: eric murray / Unsplash
内装は、テーパーエッジの石膏ボードを用いて、全ての入隅に石膏パテと紙を伏せ込む処理を行う、北米式のドライウォール処理を行います。テーパーエッジの石膏ボードは、日本で一般に使用されるベベルエッジの石膏ボードと比較して、目地強度、平滑性に優れています。耐火や遮音、気密性能に優れた内装下地です。北米式のドライウォールについての詳細はこちらへ。
Image Credit: loren biser / Unsplash
垂木、野地板を二重に施工し、一層目の野地板と二層目の野地板の間での通気層を確保します。手間はかかりますが、壁と同じ、防水層の外側での通気排水層を持つ、理想的な屋根構造です。
Image Credit: rupixen com / Unsplash
住宅瑕疵担保責任保険(10年)はもちろん、地盤保証(20年)、シロアリ保証(5年更新)等を付保致します。工事中の保険として、PL保険、建設工事保険、請負業者賠償責任保険等に加入しています。
構造、温熱、防水に絡む施工の殆どを私自身が行います。作る家は私が作りたい家。私が住みたい家。確実な施工をお約束致します。是非ともご連絡をお待ちしております。
追記:ケープコッドの建築で殊に著名な北米の建築家、Royal Barry Willsの建築を是非ともご覧になって下さい。YouTubeのBob Vila氏のチャネルで紹介動画があります。